ススキ
犬を散歩に連れていくのですが、ススキがぼちぼち伸び始めている場所があって、そこに犬が入って行きたがるんです。マーキングのためなんでしょうね、もうがむしゃらに、ススキの中に飛び込んで行きます。
ススキは秋が深まるにつれてもうちょっと高くなるんでしょうけど、いまのところ犬の背と同じ位のもので、だから犬の毛にススキの毛がたくさんくっつきます。ススキの毛、まあ種ですね、犬の毛にくっついてって、どっかに運ばれます。で、遠いところで落とされて、新しい芽が出る。
ウチの犬は運搬要員としてうまいことススキに使われています。ススキのような、植物がそういう他の動物に運ばせるやり口っていうのは、一体誰の意思による発明なのかなと、いつも感心します。他人があっての自分なわけで、そういった立場から、ススキという植物は、他の生物のことをどう認識しているんだろう。
種の繁栄を、別の種の移動にかけてしまうわけですから、いささか小賢しいともいえる手口で、ススキは「どうもススキです」という顔をしていながら、しれっと犬に子をわが子を託すという、ずるいといえばずるい繁殖法かもしれないけれど、でも現実に太古の昔からそれでやってきているわけだから、それはそういうものなんです。それはそれでいい。
うまいことやるな、と、単純に思い、なにしろ他力に任せてばら撒くんだからこのやり方ならさぞかし増えるんだろうなと考えるのですが、どこかで調整が効いているらしく、ススキの繁殖範囲というのは毎年ある程度のところで収まります。どんな雑草もそうで、どこかで調整されますね。いくら巧妙な手口でもって種をばら撒いても、世の中がススキで覆いつくされることはないです。
外来種の、例えばセイタカアワダチソウなんかも、戦後日本において猛烈な勢いで繁殖しましたが、日本がまっ黄色になるというほどでもなく、そこそこで止まっています。そういった、限界点のようなものって、宿命だと思うんです。水はどうやったって100度で沸騰するんだし、夕日が沈むと暗くなります。
どこかの生物学者が、外来種なんてほっときゃいいんだ、駆除駆除駆除といって、無駄な予算をかけて人の手で狩ってしまおうったって、一度増えたものを0パーセントにまで根絶することは小さな島でもない限りほとんど不可能で、また残酷な話で、それよりは自然のままに任せておけ、と言ってました。
人間の都合が入ると、どうしてもいろんな矛盾が出てくるので、どういう行動が正義なのかっていうのはほんとにむつかしい問題だと思います。まあ、それはそれとして、繁殖の限界っていうのは必ずあって、どこかで調整されていて、そういうのはあらかじめ種ごとに宿命的に埋め込まれてるんでしょうね。
現実に、今まで地球がススキだけの星になったこともないし、イワシだけということもないし、タンポポだけ、とかガゼルだけとか砂だけとかペニシリンだけとかになった歴史はないので、完璧な繁殖力ってどんなものか想像つかないですが。でも「増えたい」という意志のようなものは、身の回りで頻繁に感じます。みんな増えたいんだなあー、って、よく思います。
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